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※内容は取材当時のものです。変更となる場合がございますのでご了承ください。
今回は富士市にある「おちあいどっとこむ」さんにおじゃましました。こちらは、「塩とにがりの専門店」として、世界各国の塩の輸入、製造、販売を行なっているお店です。こじんまりとした店内の中に入ると、目に飛び込んでくるのは、塩、塩、塩!!床から天井までびっしりと塩が並んでいます。
店主さんの以前の職業は、スーパーのバイヤー。あるとき、食料を調達しにコスタリカに行き、ご飯屋さんでお肉料理を注文されたそうです。サーブされたお肉料理と一緒に、さまざまな塩が出され、その塩をつけて食べたところ、今までに食べたことのない味だと感動を覚え、それがきっかけで塩に興味を持たれたそうです。そのときのことを熱く語っていただきました。「日本の塩が1番だと思っていた自分が恥ずかしくなった」と。
もともと8か国からはじめた塩の販売も、現在は61か国、80地域の塩を販売しています。なぜ国と地域の数にここまでの差があるのか、それは、地域によってまったく味が違うからです。この辺りでいうと、三島~箱根の距離でも、全く塩の味が違うといいます。同じ国でも、気候が違うと、作られる塩も変わってくるのです。
現在販売されている塩の種類は、限定品を含めると、なんと120種類!塩だけでこんなに種類があることも驚きですよね。このお店でしか売っていない塩を手に入れたい!と、県外からのお客様もいらっしゃるほどです。
1番人気の塩は、インドのベンガルの岩塩「カラナマック」。カラナマックとは、黒い塩と言う意味です。インドやネパールの一部の地域でしか取れない貴重な塩なのだそう。なめさせていただいたところ、はっきりと硫黄を感じるお味でした。箱根の黒たまごの味、と言えばピンとくる方がいるかもしれません。さて、黒い塩、という意味の名前と、実際の塩の色のピンク色に気になった方はいませんか?このピンク色をしたカラナマック、もともとは黒い鉱石なのです。空気中の湿気に触れ、酸化してピンク色に変化するのだそうですよ。ピンク色、まさに鉄分の色です。
お店の紹介とは少しそれますが、岩塩には、鉄分や亜鉛が豊富に含まれています。この栄養素は、人の体では勝手に生成されないので、食べ物やサプリで摂取しなければいけません。サプリで摂取するより、良い塩をなめて摂取したほうが体に良さそうですよね。
店内にずらりと並んでいる塩たちですが、すべて100~500gほどの小袋サイズになっています。お値段もお手頃です。それは、各家庭のダイニングテーブルに3種類くらいの塩を常時置いてほしいという店主さんの想いから成り立っています。色んな味に興味を持って、試してみてほしいと店主さんは言います。
例えば、ゆで卵を食べる際に塩をかける方、数多くいらっしゃると思いますが、ゆでたまごを一口で食べる方はほとんどいませんよね。大体3口くらいで食べるのではないでしょうか。そうすると、3口分、さまざまな味に出会えるのです。こうして、色々な味で食べて、もっと塩に興味を持ってほしいという願いが込められています。
ふだんスーパーで販売している塩は1kgが多いと思いますが、こちらのお店では1kg の販売は業務用扱いとのこと。小袋で販売するというこだわりがよくわかりますね。
小袋サイズの塩の表面には、すべて「煮物向け」「肉向け」など、どれがどのような料理に向いているか、すべてに書かれています。こちらも、このお店ならではのこだわり。その中でも1番人気は、肉向けの塩です。上記にあるカラナマックも、肉にも向いている塩です。焼いて塩を振って食べるだけで、風味が香って、とってもおいしいのだそう。どのような料理に向いているかは、各国の料理人に決めてもらったそうです。
店内には、天然にがり「まどぅら」も売られています。濃度は、約30Be(ボーメ)。このようににがりの濃さを記載しているのは珍しく、このお店唯一ではないかとのこと。濃度が薄くても濃くても、にがりはにがりですから、わざわざ他のお店は濃さなど書かないそうです。しかし、このお店では濃度をしっかりと指定したうえでつくられており、お店に並んでいます。
お店の外の看板には、「ソルトミニミュージアム」と書かれています。塩の種類も、採掘の写真も、ミュージアムさながら。まったく大げさではありません。そして店主さんのお話しも、聞き入ってしまうくらい、非常に壮大な実体験を話してくださいました。空路や船路を使っての塩の輸入方法や、世界中まわって実際に塩を採掘した時のこと、さまざまな国の大使館を顔見知りなこと、ネットでさくっとやり取りができる現代でも、未だ一部の地域では実際に買い付けのために海外へ飛んでいることなど・・・ここには書ききれないくらいです。取材に行った際も、本当はもっと聞いていたいくらいでした・・・。
ガラス張りの壁には、紅葉の葉がちらり。取材にうかがったのは12月初旬だったので、もうすぐクリスマスの装いに変わるそうです。
現在では、富士宮の博物館にこのお店の鉱石が飾られていたり、スカイツリーの中の展示にも石が飾られています。塩に関する本の出版予定だから話を聞きたいと取材もされたことがあるそう。「塩は食べられる鉱物」だと店主さんは言います。
今では、講演会や直売会も行っています。直売会では、塩をなめられるサービスを行っていて、お子さんに大人気のようです。お子さんがご両親に、「この塩でおにぎり握ってー!」と言っている声が、どこからともなく聞こえてくるそうですよ。
知れば知るほど奥深い、店主さんがこだわりぬいて探した塩。今月号のプレゼントにもなっていますので、気になる方はぜひご応募ください。
ミュージアムに行く感覚で、ふらりと行くだけでもとても楽しいです。ぜひ、店主さんの壮大な実体験と想いを聞いてみてください。ただの塩、されど塩、の感覚がずっしりと心に響きますよ。
取材:ひよ
『おちあいどっとこむ』
住所 | 富士市横割6-1-1219-4 | TEL・FAX | TEL:0545-30-8835 FAX:0545-30-8836 |
営業時間 | 9:00~17:00 | 定休日 | 土曜、日曜、祝祭日 |
駐車場 | あり |
ぜひ、それぞれの料理に合ういろいろな色・味の塩を試してみてはいかがでしょうか?