日本には春と秋に「お彼岸」と呼ばれる、ご先祖様を供養する日があります。今回は秋のお彼岸について、ご紹介します。
お彼岸とは
お彼岸は亡くなったご先祖様をご供養する仏教行事という印象を持っているかと思います。「お彼岸」の語源は、古代インドの言語であるサンスクリット語の「paramita(パーラミタ)」です。これを中国語で「到彼岸(とうひがん)」と訳されたものが、やがて「彼岸」と呼ばれるようになりました。お彼岸そのものは日本で始まった風習で、インドや中国にはないものです。お彼岸は、平安時代頃に始まり、現在のようなご先祖様のご供養をする行事として広まったのは室町時代頃とされています。春のお彼岸は春分を中心とした前後3日を含む7日間、秋のお彼岸は秋分を中心とした前後3日を含む7日間となっています。お彼岸にはお墓参りをしたり、仏壇のお参りをしたりするのが一般的です。
お彼岸とお盆は同じようにご先祖様を供養する行事です。ですが、お盆はご先祖様に来ていただくのに対し、お彼岸はこちらからお墓参りに出向くものです。お盆はルーツが中国に対し、お彼岸は日本独自のもので、それぞれ異なります。
おはぎとぼたもち
お彼岸のお供え物としては「おはぎ」「ぼたもち」が一般的です。これらは同じものですが、季節によって呼び名が変わります。春は、春に咲く牡丹の花になぞらえて「ぼたもち」、秋は、秋に咲く萩の花にちなんで「おはぎ」と名付けられています。秋は小豆の収穫時期で皮も柔らかいため粒あんでおはぎを作ります。春は、保存していたあずきの皮が固くなるためこしあんでぼたもちを作ります。
牡丹と萩
それぞれのお花の特徴や由来になった理由をご紹介します。
○牡丹
「立てば芍薬、座れば牡丹・・・」と形容されてきたように、美しさを象徴する植物です。大ぶりの美しい花を咲かせる牡丹の花言葉は「王者の風格」「富貴」「壮麗」「恥じらい」「誠実」です。
牡丹は女性の血を調える漢方として古くから知られていました。華やかで縁起のいい花に見立てることで、魔よけや病除けを期待するところから、「ぼたもち」と名付けられるようになったと考えられています。
○萩
枝垂れて赤紫色に花を咲かせるのが特徴の萩は、古くから日本人に親しまれてきた植物です。花言葉は「内気」「思案」「柔軟な精神」です。
萩は秋の七草のひとつでもあります。秋の七草は、主に婦人病に効く漢方の生薬として使われていました。「萩すだれ」という言葉もあるように、すだれ状に垣根を覆います。こうしたことから魔よけや病除けとして「おはぎ」と名付けられたと考えられています。