日本の夏の象徴で、音色が聞こえてくると涼しさを感じられる風鈴。
暑い夏に癒しを与えてくれる風鈴はどのようにして生活に取り入れられたのでしょうか?
今回はそんな風鈴についてご紹介します。
風鈴の歴史
風鈴は中国で作られていた「占風鐸(せんふうたく)」が起源とされています。この占風鐸は風の向きや音の鳴り方で吉凶を占う道具で、仏教と共に日本へと伝えられました。現在でもお寺の軒下の四方に吊るす「風鐸」としてその形を残しています。風鈴の起源といわれていますが、青銅で作られた風鐸は小さな鐘のようで、強風が吹くとガランガランと鈍い音を立てます。昔から音の出るものを獣除けや魔除けとして利用していたことから、当時は厄除けとして利用されることが多く、この音が聞こえるところは悪いものが寄り付かないと信じられていました。
今のようなガラス製の風鈴が出始めたのは1700年頃で、ガラスの製造方法が国内に広がるまでは非常に高価な物でした。風鈴が世の中に広まったのは明治時代です。高価で手が届かなかったガラス製品が安くなったことで、一挙に広がりをみせたと言われています。
現在は、集合住宅などでは風鈴の音が騒音とみなされる可能性もあり、その姿を見る機会は少なくなりました。そのため軒先に吊るすのではなく、室内に置いてインテリアとしても楽しめるデザインも増えています。また袋井市の「遠州三山風鈴まつり」や河津町の「風涼渓」、埼玉県にある川越氷川神社の「縁むすび風鈴」、群馬県前橋市を走る上毛電鉄の「風鈴電車」など、風鈴の音を楽しむ催しは夏の風物詩として全国各地で開かれています。
風鈴の種類
現在の風鈴はガラス製の「江戸風鈴」と鉄製の「南部風鈴」が代表的ですが、他にもさまざまな風鈴が存在しますので、いくつかご紹介します。
江戸風鈴:宙吹きの技法を使ったガラス製で、内側から行う絵付けまで手作りで行なわれている為、同じ形・同じ絵付けでも、それぞれ音色が異なります。大きさは3種類、形はひょうたん、すずらん、しんすい、小丸の4種類あります。
南部風鈴:大正時代頃から、岩手県の南部鉄器で作られています。お寺の鐘のような形や、灯篭・屋敷の屋根などいろいろなデザインの物があります。澄んだ音色も特徴です。
高岡風鈴:富山県高岡市の伝統工芸技術を用いて作られている、真鍮でできた風鈴です。真鍮は銅と亜鉛の合金なので、金属でできた風鈴の1つと言えます。高岡鋳物製造技術によって作られ、ろくろを使って職人が仕上げています。
小田原風鈴:神奈川県小田原鋳物で作られる、銅・錫・鉛などからできる銅合金の一種・砂張(さはり)の風鈴です。北条時代から始まったと言われる、伝統工芸のひとつです。
明珍火箸風鈴:兵庫県姫路市で作られている、火箸を使った個性的な風鈴です。四本の火箸を吊り下げたデザインで、きれいな音色を出します。鉄の他に、チタン製のものも作られています。
別府竹風鈴:大分県別府市で作られる竹細工の風鈴です。風鈴の本体は鉄ですが、周囲を竹細工で覆っています。
備長炭風鈴:和歌山県の備長炭を使ってできた風鈴です。棒状の炭が数本連なった真黒な風鈴で、透き通った音色が特徴です。