日本の春の象徴的存在である桜の季節がやってきました。
この季節になると気になるのはいつ開花するのか、見頃はいつなのか、よく聞く「桜前線」とは・・・。
今回は桜についてご紹介します。
桜前線
テレビでよく耳にする桜前線とは、日本各地の桜の開花日を線で結んだものです。天気図の前線のように見えることから桜前線と呼ばれるようになりました。1月中に沖縄・奄美地方、3月半ば以降に九州や四国の南部、4月末には東北地方から北海道、5月下旬にかけて北海道東部・北部へと桜の開花が進む様子から“桜前線が北上”というフレーズをよく使用します。この「桜前線」は気象庁が発表するものと思われがちですが、少し異なります。気象庁では「さくらの開花日の等期日線」という用語を用いています。梅やあじさいの開花、ウグイスやアブラゼミの鳴き声を初めて聞いた日など、動植物の動きを指標とした「生物年季観測」を毎年行ない、気候や季節などの推移を把握しています。この「さくらの開花日の等期日線」もそのひとつです。「桜前線」はメディアが使い始めた言葉で、各地の気象台で開花の観測が開始され、発表されるようになった1970年代後半から80年代始めにかけて広く使われ始めました。
気象庁は毎年「さくらの開花予想の等期日線図」を発表していましたが、民間の気象事業者が同等の情報提供を行なっているとして、平成22年から開花予想を取りやめました。ちなみにさくらの開花予想は、「いつ咲いたか・その時の気温がどうだったか」という過去のデータと、前年の秋から今までの温度変化、これからの予想気温のデータを使って計算し、いつごろ咲くのかを予想しています。気象庁による開花と満開の観測と発表は、環境や気候が変わることによる植物への影響をとらえるため、これまでどおり続けられています。
開花
気象庁の開花宣言が出されていないのに近所の桜が満開となっていたり、開花宣言が出されたけど全然咲いていなかったりということがよくあります。この開花宣言の基準となる桜は地域ごとにある標本木です。標本木は気象台から近いところで、周辺の環境が変わりにくい場所にある木が選ばれています。構内に標本木がない東京都では靖国神社内の桜、京都府では地方気象台正門近くの桜などが選ばれています。桜の種類はソメイヨシノとされていますが、ソメイヨシノが咲かない沖縄・奄美地方ではヒカンザクラ、北海道の北東部ではエゾヤマザクラやチシマザクラを観測しています。ちなみに静岡県の標本木は、駿河区曲金にある静岡地方気象台構内にあるソメイヨシノです。標本木の老化や周囲の環境の変化によって、標本木が変わることがあります。
この標本木の桜に、5~6輪以上の花が咲いた日を開花日としており、観測員が目を凝らして花数を数えています。テレビでよく観測員が数えている様子が報道されています。満開日の基準は、その標本木の桜で8割以上のつぼみが開いた日となっています。開花から満開までは、数日から1週間ほどかかります。
ソメイヨシノよりも早咲きの品種もあり、開花宣言は出されていないけど、桜は満開ということもよくあります。もともと気象庁の観測は、季節の遅れ進みや気候の違いなど、総合的な気象状況の推移を把握するために行なっているため、私達のニーズと異なっているようです。