紅葉狩りの疑問

秋の深まりとともに、野山が赤や黄色で彩られる季節になりました。その美しさに誘われて、紅葉狩りに出かけましょう。

●紅葉は日本だけでしょうか?
いいえ、他の国でも紅葉が見られます。でも、日本の紅葉は格別なのです。
世界の国々の中でも、とりわけ日本の紅葉が美しいと言われているのは、日本の気候風土のなせる技!そもそも、紅葉が見られるのは落葉樹と呼ばれる種類の木だけですが、世界の国々でも落葉樹林がまとまっているのは、東アジアの沿岸部と北アメリカ大陸の東部、ヨーロッパの一部にすぎません。
地球の3割ほどが森林ですが、一番面積が広いのはロシア・アラスカ・カナダなどに広がる針葉樹林。次に広いのはジャングルなどの熱帯雨林。日本は国土のおよそ7割が森林で様々な落葉樹が生えていますし、寒暖の差が結構ありますから、いたるところで美しい紅葉を楽しむことができるわけです。

●「紅葉狩り」ってモミジの木を探しに行くの?
いいえ、モミジという一種類の木ではありません。
モミジと言えば赤く色づいた手の平のような葉を思い浮かべますが、これは「イロハカエデ」というカエデ科の植物のこと。「イロハモミジ(イロハカエデのこと)」「ヤマモミジ」「オオモミジ」など何々モミジと呼ばれている木は全てカエデ科の植物です。
こうしたカエデ科の紅葉(こうよう)が特に見事なので、カエデ科の植物を「モミジ」と呼ぶこともありますが、秋に紅葉・黄葉する植物全般をさして、広く「モミジ」と表現します。
もともと「モミジ」とは、染料をぎゅっと揉んで染色するという意味の「もみづ(揉出)」という言葉を語源として、木々の葉が色づく様子を示す動詞だったそうで、「紅葉」と書いて「もみじ」と読むようになりました。

●「紅葉狩り」って採取すること?
いいえ。「ぶどう狩り」や「きのこ狩り」と違い、観賞するもの。紅葉見物に出かけることですから、枝葉を採取してはいけません。
もともと平安時代の貴族の間で始まり、紅葉を見物しながら宴(うたげ)を開き、その美しさを和歌に詠んで勝負する「紅葉合」が流行したそうです。その後、江戸時代から庶民にも広がり、季節行事として定着していきました。
春の花見に対して秋の紅葉狩りというのは、日本人の心を動かす自然の饗宴(きょうえん)。「狩る」という言葉には「花や草木を探し求める」という意味があります。

●なぜ、紅葉の善し悪しがあるの?
日中の天気、昼と夜の寒暖の差、水分。この3要素が関係しているからです。
日中の天気がいいほど赤い色素となる糖分が活発に作られますが、夜の気温が高いと、昼間作った糖分を使って活動してしまうため、鮮やかな赤になりません。ですから、昼間は日光が強くて夜になると冷え込む陽気だと、鮮やかな紅葉になるわけです。
また、乾燥しすぎて葉が紅葉する前に枯れてしまっては仕方がないので、適度な雨や水分も必要です。紅葉の名所に渓谷や川沿いが多いのは、日当たり・夜の冷え込み・水分という3つの条件が揃っているからなんですね。よく、今年は色づきがいいとか悪いとか言いますが、同じ場所なのに毎年色の具合が違うのはこのためです。
ちなみに、明け方の最低気温が6度~7度位になると紅葉が始まり、およそ20日~25日後に見頃を迎えます。こうした条件と照らし合わせながら、紅葉をチェックしてみるのも楽しいでしょう。

【ちょっぴり雑学:カエデの由来】
「カエデ」とは蛙の手に似ていることから「蛙手」が訛(なま)ったもので、「イロハカエデ」というのは7つに分かれている葉っぱがイロハニホヘトと数えられることに由来します。このイロハカエデの紅葉が特に美しいことから、いつしか「モミジ」の代名詞として親しまれるようになったのです。